Maruyama keita biography of alberta
ケイタマルヤマ30周年 デザイナーとして語る「今、企業に必要なこと」
DREAMS COME TRUE、浜崎あゆみなどのステージ衣装から、企業ユニホーム、もちろん個人向けのアパレル商品まで、幅広い分野でデザイナーとして活躍してきた丸山敬太氏。2024年にデビュー30周年を迎え、現在は「丸山百景」と名付けた周年プロジェクトに取り組む。これまでの30年、そしてさらにその先へ――。丸山氏が考えるファッションの価値とは。
丸山敬太(まるやま・けいた)氏
ファッションデザイナー
1965年東京・原宿生まれ。1987年に文化服装学院ファッション工科・アパレルデザイン科を卒業後、BIGIグループの「キャトルセゾン」に入社し、「アツキ・オオニシ」の企画デザイナーを務める。1990年に独立。DREAMS COME TRUEをはじめ、多くのミュージシャンやタレントのステージ衣装、テレビやCMでのデザインを手掛けて話題に。94-95秋冬東京コレクションに「KEITA MARUYAMA Yeddo PARIS」として初参加し、メンズ・レディースの両ラインを発表。近年は、自身のブランド活動にとどまらず、ファストファッションのブランドプロデュース、制服デザイン、さらにはファッションの枠を超えた“食”や“住”にも活動の場を広げている
デザイナーとしての丸山敬太氏の活動領域は広い。
1994年に「KEITA MARUYAMA TOKYO PARIS」として東京コレクションでデビューし、洋服をはじめとしたファッションアイテムを展開。一方で、DREAMS COME TRUEや浜崎あゆみなどのミュージシャンのステージ衣装、日本航空(JALグループ)や「春水堂」店舗スタッフのユニホーム、建設会社の作業着、小学校の制服のデザインも手掛ける。
近年は企業とのコラボレーションにも積極的で、崎陽軒(横浜市)とは、同社の「昔ながらのシウマイ」や「シウマイ弁当」のパッケージデザインとコラボレーションしたオリジナルのTシャツやバッグ、クッションなどを生み出した。
その丸山氏がデビュー30周年を迎え、1年をかけて展開する周年プロジェクト「丸山百景」は、同氏のこれまでの活動を凝縮したようにバラエティーに富んでいる。
24年9~10月には、「FASHION(表参道ヒルズ)」と「COSTUME(ラフォーレ原宿)」をテーマに、30年間の軌跡をたどる展示会「ケイタマルヤマ遊覧会」や丸山氏が生まれた街・原宿とのコラボレーション企画を展開した。
24年12月には、阪急うめだ本店(大阪市)で、「KEITAMARUYAMA 30周年×DREAMS COME Right 35周年 記念祝祭『大衣装展覧会』-大阪LOVER-」も開催予定だ。
これらと並行して、24年7月からは雑誌「otona MUSE」(宝島社)で漫画連載も始まった。羽海野チカ、くらもちふさこ、桜沢エリカ、槇村さとる、松田奈緒子、ひうらさとる、東村アキコ、矢沢あい、やまだないとといった豪華な作家陣が、KEITA MARUYAMAにちなんだ漫画やイラストを執筆する。
また、「ENFOLD(エンフォルド)」や「LILY BROWN」「FACETASM」「HERILL」「grounds」などのファッションブランド、ゲームタイトル『うたの☆プリンスさまっ♪』とのコラボレーション商品も販売する。
周年プロジェクト真っ最中の丸山氏に、活動を支えてきたモチベーションや、同氏が考えるファッションの力、さらにはマーケティングに必要な視点にまでを聞いた。
この記事の流れ
- 思い出に浸るだけにはしたくなかった
- 1000超のテキスタイルをIPにしたい
- ファッションとエンタメの共通点
- 企業コラボはその会社の目的理解から
- 今、消費者に選ばれる企業に必要なものとは
思い出に浸るだけにはしたくなかった
――30年間の活動の集大成ともいえる「丸山百景」は、バリエーション豊かな内容ですね。
丸山敬太氏(以下、丸山) 今回それが1番やりたかったことなんです。
僕は「ファッション」というカテゴリーの中で、仕事をしてきました。ただし、ファッションというのは、洋服を作って売るだけではなくて、その人の人生や生活に彩りを与えたり、付加価値を与えたりするもの、すべてです。その思いでずっとやってきたので、今回30周年という区切りで、僕の活動のすべてを見せられたら、と考えました。
「ケイタマルヤマ遊覧会」は表参道ヒルズとラフォーレ原宿の2会場で開催。表参道ヒルズはファッションをテーマにデザインスケッチやアート性の高い刺しゅう作品を展示
[画像のクリックで拡大表示]
ただ30周年を回顧する、思い出に浸るだけのプロジェクトにもしたくはありませんでした。
インターネット普及前後で社会は大きく変化して、今はデジタルネーティブな人たちが中心になりつつあります。そんな彼らと話していると、仕事の仕方やツールが違っても、悩みや考えていることは僕の若い頃と同じだったりして、本質的なところはあまり変わらないと感じます。
そんな中で、ちょっとおこがましいかもしれないけれど、前の世代から学んだり浴びたりしたものも含めて僕がやってきたことすべてを見せることで、次の世代へつなぐ一端が担えればいいなと思いました。
それに、若い人たちとコラボしていると、“混ざっていく”感じもあるんです。それもファッションならではだと改めて感じています。
1000超のテキスタイルをIPにしたい
――若いデザイナーやファッションブランドとのコラボが特に印象的です。メンズ、レディースを問わず、たくさんのブランドがKEITA MARUYAMAをモチーフにファッションアイテムを制作しています。
丸山 僕の強みは、テキスタイルのアーカイブを豊富に持っていること。花や動物、バカンスやオリエンタルなど多様なジャンル、色、柄で、その数は1000以上あります。30年やってきたので、相当な数になりました。
僕もずっと生きているわけでもないですし、自分が作ったデザインやブランドを次の世代にどう残していくのかを考えるんですね。
KEITA MARUYAMAのアパレルブランドは、別のデザイナーがやってくれるかもしれない。そのとき、僕のフィロソフィーは残るかもしれないけど、何かまた別のスタイルに変わっていくと思うんです。
でも、テキスタイルは創立デザイナーの僕がブランドの第1期に作った柄として、それ単独でブランドの外にも広がってほしい。
KEITA MARUYAMAでは、ブランドオリジナルの缶にクッキーを詰め合わせたクッキー缶も作っていますが、これもそういう考えからで、柄自体をKEITA MARUYAMAとして、いろんな人が使ってくれればと思っています。
KEITA MARUYAMAではテキスタイルをあしらった缶入りのクッキーを販売。ブランド30周年記念には人気のモチーフパンダをかたどった商品も
[画像のクリックで拡大表示]
――柄自体がIP(知的財産)になる。英リバティ社の「リバティ・プリント」なんかがそうですね。
丸山 そうです。リバティ・プリントとかフィンランドの「マリメッコ」みたいなあり方を最終的に目指したいんですよね。
30年続けてきたことでKEITA MARUYAMAの柄として見てもらえるだけの量にもなったから、「そういうことなら使いやすいかも」といろんな人に思ってもらえたらいいなと。
メンズ、レディースを問わず、若手デザイナーがKEITA MARUYAMAのテキスタイルやモチーフを使い、新たな作品を制作している。写真はLILY BROWNとのコラボ
[画像のクリックで拡大表示]
実際、丸山百景を進めていく中で、若いデザイナーやブランドにKEITA MARUYAMAのテキスタイルを使ってもらうと、僕が思いもよらなかった使い方をするんです。
柄自体を拡大したり縮小したり、色をモノトーンにしたり。いろんなバリエーションを考えて料理してくれる。そうしてできあがったものを見ると、KEITA MARUYAMAらしさは必ず残っているんです。改めて柄の無限の可能性を感じるし、いい形でエッセンスを残していけそうだな、こうやって広がっていってくれるといいなと思います。
それは例えば清涼飲料水のパッケージでもいいでしょうし、インテリアだったりケーキだったりでもいい。街自体にアクセントとして使うことだってできるかもしれません。